固定残業代(定額残業代)制度の適用

思い当たる節はありませんか?
(とあるIT企業)
・最初のうちは勉強することも多いだろうから、会社にいる時間が長くなってしまうと思うけど、それは自主的なことだから残業ではないからね。
(とある飲食店)
・君、経験ないんでしょ?うちで板前の修業をさせてあげるから。拘束時間はどうしても1日11時間くらい(休憩1時間)になってしまうけど、見習いだから残業は出ないから。
 
社長のお気持ちはよく分かりますが、どちらの場合でも残業代は発生してしまいます。
・しかし、お互いが合意しているのだからいいじゃないか?!
・そんなことを言っていたら、働ける場はなくなってしまうよ!
おっしゃる通りです。
 
しかし、現在の労働基準法は第2次産業を中心とした高度成長期にはうまく機能していたかもしれませんが、今はちょっと時代遅れの感は否めません。
とはいえ、法律は法律ですので守らなければなりませんし、最近は未払い残業代請求も零細企業相手に起こす時代です。
ですので、最初にお互いが納得して合意に達した賃金水準とその働き方については、きちんと書面に残し、新人でも見習いでも残業は残業と認識し、その残業見合い分も給与に含まれている、という仕組みを作るべきです。
 
簡単に例を挙げるとすれば、

総額240,000円の給与を払うのであれば、基本給240,000円とするのではなく、
基本給     180,000円
固定残業手当  60,000円(42時間分の時間外労働割増賃金分)
こうした内容を、
1.就業規則(または賃金規定)
2.雇用契約書(または給与辞令など)
3.給与明細と賃金台帳
上記3つで明記し、制度として導入することを固定残業(定額残業代)制度です。
適正な固定残業代(定額残業代)制度は適法です。

中途半端な固定残業代制度は、違法である可能性、コンプライアンス的に問題がある恐れがあります。また裁判で争われた場合、違法な固定残業代制度は未払い残業代を認定されるだけではなく、裁判官の心証を悪くし、付加金の支払いを命じられる恐れもあります。

未だに固定残業代制度=悪、違法との考えを持たれる方もいますが、会社の実情に合わせ、労使が納得し、適正に導入された固定残業代制度は決して悪いものではありません。
 
これから人を採用しようとしている会社さんは、今から導入すべきです。
もう人を雇っているが、いまのメンバーは信頼できる人だがこれから多くの人が入社することを考えるとリスクヘッジをはかっておきたい、という会社さんはまだ間に合います。
かなり社歴も長く、社員数が50名を超えているような会社さんは、導入が不可能とは申しませんが、かなり難しくなります。
できれば社員数30人未満のうちに、固定残業代(定額残業代)制度を導入すべきです。
 

年俸制の考え方

まず年俸制の読み方ですが、“ネイポウセイ”であり“ネンボウセイ”ではありません。
年俸制には賛否両論がありますが、残業代を含んだ年俸制にすれば、実質的には固定残業制度(定額残業制度)とさほど違いがなくなってきます。
年俸制特有の注意点さえ抑えておけば、年俸制にするかどうかは、経営者の好みといえるでしょう。

年俸制特有の注意点とは
@ 年俸制だからといって、プロスポーツ選手のように査定時に50%ダウンといったドラスティックな賃金下げは無理だということ。
A 諸手当は、通勤手当・出張手当以外は、全て基本年俸の査定において加味するべきで別項目(資格手当・役職手当など)は作らないこと。
B 半期年俸制の導入は、その長所・短所をよく考えてから行うこと(年俸額の保障が1年でなく、半年でいい反面、査定作業が年2回必要)
C いくら年俸制とはいえ、イコール人材を1年間拘束できるわけではないこと(途中退職されても損害賠償請求は難しい)。

賃金制度と労働基準法

現在の労働基準法は、時間を最も重要な判断材料として、賃金の支払いを義務付けています。まさに強制労働、第2次産業を中心とした考えのままでなのです。しかしながら、愚痴を言っているだけでは始まりません。適法に、かつ人財のモチベーションを引き上げていかなければならないのです。そうなると、土・日・深夜出勤を除いた固定残業制度(定額残業制度)を活用すべきです。無理をして管理監督者・裁量労働対象者に当てはめ、後で労働基準監督署やユニオンに指摘を受け、残業代を遡って払う危険性があるのなら、最初から固定残業制を敷いたほうがよほど安全だと言えます。
また、賃金制度は時代や法改正によりドラスティックに変えて良いと思います。